お子さんが受診する症状で「鼻水」は多いと思います。
小児科であれ耳鼻科であれだいたい同じ薬が処方されます。
そのなかで抗ヒスタミン薬という種類の薬が処方されることが多いのですが、この抗ヒスタミン薬には注意が必要です。
多くの「鼻水」は、アレルギーの原因になる物質(アレルゲン)、あるいはを侵入した病原体(ウイルスや細菌など)排除・排出するために働いています。
かなり単純に言うと、「鼻水の原因はアレルギーかアレルギー以外か」です。

あ!それであの人のあの御言葉!

あのお方はそんな事おっしゃってませんよ
0) 繰り返しアレルゲンにさらされることによって、そのアレルゲンに対応するIgE(アイジーイー)という物質が作られます。IgEは肥満細胞(マスト細胞とも言う)の表面にくっついています。
1) 体内にアレルゲンが侵入してくると、アレルゲンと肥満細胞の表面にくっついているIgEが結合し、肥満細胞から「ヒスタミン」や「ロイコトリエン」といった化学伝達物質が放出されます。
2) 「ヒスタミン」が鼻の感覚神経を刺激して「くしゃみ」を引き起こします。また、鼻の中の分泌腺を刺激して「大量のサラサラした鼻水」を分泌させます。同時に血管を拡張させる結果として「鼻づまり」が起こります。
アレルギー性鼻炎の代表的な症状である「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」は「ヒスタミン」などの化学伝達物質によるものです。
ここで「ヒスタミン」の働きを封じる薬「抗ヒスタミン薬」を使うとどうでしょう。
「ヒスタミン」によって引き起こされる諸症状が緩和されます。
アレルギー性鼻炎(それに伴う鼻水)の標準的な治療薬は、抗ヒスタミン薬。鼻噴霧用ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬です。
お子さんの鼻水がアレルギーによるものなら、抗ヒスタミン薬の使用は十分理にかなったものです。スマートな処方です。症状によっては、鼻噴霧用ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬を併用します。これは「鼻アレルギーガイドライン2024年版」でも推奨されている標準的な治療方法です。
鼻噴霧用ステロイド薬は安全で効果のある良い薬です。効果の発現まで数日を要しますが、連日でも使えます。
同じく鼻に噴霧する鼻づまりを緩和する薬に、「血管収縮薬」があります。即効性に優れており、使用すると直ちに鼻づまりが解消されることから好まれることがあるのですが、薬剤性鼻炎の原因になったり、薬の効果が切れたときの症状再燃(リバウンド)が強かったりで、小児には(本当は成人でも)使用が勧められない薬です。すぐ効く薬として処方されることがありますが、注意しましょう。
アレルギー以外として代表的なものは「感染症(風邪など)」です。
ここでは「風邪」の場合をお話します。
「風邪」の原因はウイルスや細菌(まとめて病原体といいます)です。
病原体が鼻の粘膜に付着して組織や細胞に侵入すると、体は病原体を排除しようと免疫システムが働きます。
その結果、局所的な炎症反応が起きます。
血管が拡張し血管壁が体液を通しやすくなり、粘膜が腫れます。
病原体排除するためにたたかった白血球の残骸や壊れた粘膜の細胞などが、滲み出てきた体液や粘液と混ざり合って「鼻水」になります。
感染が進んできてから白血球の残骸などが混じってくるので、「鼻水」はあとになるほど粘性がまし色がついてきます(ネバネバしてきて黄色や緑色になってきます)。
よく「鼻水が緑色だからバイキン(細菌)が付いている」との説明で、抗菌薬(抗生物質)を処方されますが、「鼻水」の色は剥がれ落ちた粘膜の細胞や白血球(好中球)の内容物に由来するものです。
好中球はウイルス感染でも働いているので、ウイルスが原因の「風邪」でも「鼻水」は着色します。
「色のついた鼻水」は「抗菌薬を処方する」理由にはなりません。
ここまで「風邪」で「鼻水」が出るしくみを説明してきたなかで出てこなかったものがあります。
そう、「ヒスタミン」「抗ヒスタミン薬」です。
「風邪」で「鼻水」が出るしくみを理解していただくと、この「鼻水」に「抗ヒスタミン薬」という薬が必要ないことがわかっていただけると思います。
ごくはじめの時期に限っていえば、「風邪」であっても「ヒスタミン」が関与した「鼻水」が出ている可能性があります。
あれ?鼻水出てるかな?早めに病院行ったほうがいいかな?と考えているような短いあいだです。
すぐに免疫の関与が中心になっているフェーズに移ります。
また、この初期の「ヒスタミン」が関与しているかもしれない「鼻水」を「抗ヒスタミン薬」で止めるべきでしょうか?
「風邪」の「鼻水」は侵入してきた病原体を体外に排除する働きがあります。
そのような「鼻水」はむしろ止めないほうが好ましいでしょう。
おおまかな「鼻水」の話をしてきました。
タイトル通りに「鼻水の原因はアレルギーかアレルギー以外」なんですが、同時に効果的な「薬」も違ってきます。当然です。
アレルギーの「鼻水」には、「抗ヒスタミン薬」が効果的です。
アレルギー以外の「鼻水」には、「抗ヒスタミン薬」は適切ではありません。

じつは、鼻水の原因をよく考えずにとりあえず「抗ヒスタミン薬」を処方するお医者さんはいます。むしろ多数派かもしれません。「抗ヒスタミン薬」は病態(鼻水の原因)によっては不要です。0歳児などはアレルギー性鼻炎は稀です。不適切に「抗ヒスタミン薬」を処方されている小さなお子さんが多いのではないかと心配しています。
いわさき小児科 