妊婦さんに接種することで、本人はもちろんのこと生まれてくる赤ちゃんも守ることができるワクチンがあります。今年はRSウイルス感染を防ぐワクチンが使えるようになりました。
RSウイルス感染を予防するためのワクチンです。RSウイルスはすべての年齢層で感染しますが、生まれて間もない時期に感染すると重症化して入院することがあります。生まれてすぐの赤ちゃんにワクチンを接種してもこのウイルスに有効な免疫を獲得することはできないので、母子免疫という方法を使います。
妊娠24週から36週の妊婦さんが接種対象です。妊娠28週から36週の間で接種するとより効果的だそうです。ワクチンを接種してから出産まで14日以上あれば赤ちゃんにも十分な抗体が移行します。
発売前の調査で接種したグループで接種していないグループに比べて早産になる傾向がみられたようですが、接種したグループはもともとリスクの高い集団だったようです。接種による早産などのリスクはほとんど問題にならないとされています。
インフルエンザワクチンも母子免疫の仕組みで赤ちゃんを守ることができます。
一昔前は妊娠中のインフルエンザワクチン接種はほとんど行われていませんでした。ワクチンに詳しい小児科で細々と接種されていました。その頃は産科の先生もあまり前向きではありませんでした。
やがて妊娠中のインフルエンザ感染が影響が大きいことやインフルエンザワクチン接種の安全性が知られてから、妊婦さんでもインフルエンザワクチン接種を行うことが普通になりました。
インフルエンザワクチンの接種ができるのは生後6か月以降です。それまでの赤ちゃんを守る手段は母子免疫です。生まれる時期とインフルエンザの流行が重なるようでしたら、インフルエンザワクチン接種をおすすめします。
Tdap(ティーダップと読みます)は、破傷風、ジフテリアそして百日咳を予防するためのワクチンです。10代の百日咳感染を予防するために使われていますが、アメリカでは妊娠中の女性にも推奨されています。出生した赤ちゃんに百日咳の免疫をつけておくために妊娠中の女性に接種します。RSウイルスと同様に生まれて間もない赤ちゃんが百日咳に感染すると重症化します。
Tdapは現時点では国内で承認されていないワクチンです。日本国内では個人輸入の形で準備し妊婦さんに接種している医療機関がありますが、とてもレアな存在です。当院では開院した年から接種できる体制を整えていますが、これまで実際に接種したのは数名です。いずれのケースも接種後の副反応が問題になったことはありませんでした。