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お薬手帳をめぐる冒険 アスベリン

イヌ ハト ウサギ アスベリン

半世紀以上前にイヌ、ウサギ、ハトの動物実験の結果をもとに(ヒトでの有効性が確認されていないにもかかわらず)承認された薬があります。

咳止めとして使われる「チペピジンヒベンズ酸塩」です。「アスベリン」という商品名を聞いたことがあるかもしれません。

論文を検索してもこの薬のヒトに対する効果について研究されたものはほとんどありません。薬疹などの副作用の報告はあるようです。

ようやくまとまった研究が外来小児科という医学雑誌に掲載されました。日本語です。

それによると、「チペピジンヒベンズ酸塩」が咳を止める効果はなく、かえって、症状を遷延させる可能性があるとのことでした。

「チペピジンヒベンズ酸塩」を服用すると時々尿が赤くなることがあります。実際のところ遭遇する副作用らしきものはほとんどこれで、重篤な副作用は極めて少なく安全な薬であると認識されています。

ただし咳は止まりません。

自分は処方することはありません。

かなり以前には処方したこともありますが、効果を実感することはなく使わなくなりました。

発売開始から60年経っていますが、はっきりした効果がないにもかかわらずなんとなく使われ続けている薬の1つだと思います。

こどもに対してこの薬をいまだに処方している医師は少なくありません。小児科医ですら処方しています。「効果があるから」という信念に基づいて処方している人がはたしてどれくらいいるかわかりません。

若い時期にこれを使うように指導されて、なんとなく惰性で処方しているのだと思います。

安全性は高い薬ですが、使うべきではありません。効果がないからです。

そもそも「咳を止めるとはどういうことか」という議論もあると思いますが今日は触れません。

自分の患者さんにはこれからも使うことのない薬です。

「効果のないものは処方しない」、あたりまえのことです。

日々の診療ですが、あまり考えることなく惰性で薬を処方することがないよう心がけます。

なかのひと
なかのひと

効果がないことを知らないのか、知っているけど処方しているのか、ありもしない効果を実感しているのか、どれも問題です。副作用が少ない薬とはいえ不要なものは不要です。