今年春から使われているワクチンです。今年4月以降に5種混合ワクチンで予防接種をはじめた人向けの記事です。4種混合ワクチンを接種している人には別の方法があてはまります。
5種混合ワクチンは2024年の4月から使われはじめた新しいワクチンです。
5種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンは、名前の通り5種類の感染症に対応しています。
ジフテリア
破傷風
百日せき
急性灰白髄炎(ポリオ)
Hib(ヒブ)感染症
昨年度までは、ジフテリア、破傷風、百日せき、ポリオの4種類に対する4種混合(DPT-IPV)ワクチンと単独のHibワクチンが使われていました。その前はジフテリア、破傷風、百日せきの3種類に対する3種混合(DPT)ワクチンとポリオワクチン、Hibワクチンに分かれていました。それまで3本必要だった注射が1本にまとまったわけで、これは注射を受ける赤ちゃんにとっては良いことだと思います。また注射をする側にとってもありがたいことです。手間が少なくなったこともありますが、それよりも本数が少なくなったことによって、ワクチンの取り間違えなどの事故が起きるリスクが少なくなりました。ワクチン接種は安全に行うことが大切です。
また、このワクチンは筋肉内接種ができるようになりました。このメリットは大きいと思います。
Hib(ヒブ)感染症とは
Hibとはヘモフィルス・インフルエンザ菌b型のことです。ヒブと読みます。Hibワクチンをヒブワクチンと表記することもあります。Hib感染症とはHibに感染することによって引き起こされる感染症で、こどもが感染すると重症化することがあります。重症のHib感染症では特に細菌性髄膜炎が恐れられており、命に関わることもありますが、救命できた例でも後遺症として発達・知能・運動障害や聴覚障害が残ることがあります。
ワクチンが導入される前は年間約600人のこどもがHibによる細菌性髄膜炎に感染していました。ワクチン導入後、Hibによる細菌性髄膜炎の発生は99%以上減少しました。
筋肉内接種
5種混合ワクチンは筋肉内接種が認められているワクチンです。これまで国内でこどもに接種するワクチンはほとんどが「皮下接種」でした。海外では不活化ワクチンは筋肉内接種、生ワクチンは皮下接種というルールが根付いていました。筋肉内接種が避けられてきた背景には、歴史的な事情があるのですが、筋肉内接種忌避が科学的根拠を欠いているとわかった後でも、長い間筋肉内接種は避けられていました。「筋肉注射は痛い」などという間違った認識が通用していました。筋肉内接種のほうが痛みは軽く、安全だと思います(個人の意見です)。ワクチンによっては効果が高いことがわかっています。
当院では5種混合ワクチンについては導入したときから筋肉内接種を行っています。
5種混合ワクチンの接種方法
5種混合ワクチンは、添付文書によると生後2か月から90か月までの間にある者に接種を行うとなっています。生後2か月になったら速やかに接種を開始したほうが良いでしょう。まず3回の接種をそれぞれ20日以上の間隔をおいて行います。「20日以上の間隔をおく」というのは「ワクチンを接種して3週後の同じ曜日から接種できる」という意味です。当院ではこの時期のワクチンを4週毎に接種することが多いです。これは同時に接種するワクチンが「27日以上の間隔をおく」と定められているためです。
3回接種が終わった後、「6か月から18か月を経過した者」に追加でもう1回接種します。同時に接種することが多い肺炎球菌ワクチンの追加接種が「標準として12〜15か月齢の間」に追加接種を行うこととされているので、これに合わせて1歳になってすぐの時期で追加接種を行う予定です。
結局どんなふうに進めていきますか?
生後2か月から4週ずつあけて3回、1歳過ぎてすぐにもう1回で合計4回です。