お薬手帳には情報がたくさん載っています。
診察をしたお医者さんが何を考えているか知る手がかりになります。
ここではいろんな処方をみて個人的な解釈を好き勝手に展開します。
ときにはびっくりするような処方にも出会います。まさに冒険です。
最初の処方はこれです。
処方内容から推測すると、発熱で受診した体重13kg前後のお子さんでしょうか?咳や鼻水の症状はあまり目立っていないようです。咽頭の発赤が軽度あるようなウイルス性の咽頭炎が考えられます。
先発品は「トランサミンシロップ」といいます。シロップ(液体)の内服薬です。炎症を鎮める効果を期待して処方します。
「肌のシミを消す効果がある」と美容目的の処方が増えたため一時期極端な品不足になりました。大変でした。
先発品は「ムコダインDS」、DSとはドライシロップのことです。服用時に水に溶かします。痰を切りやすくする作用があります。「去痰薬(きょたんやく)」と呼ばれています。気道の上皮の修復を促進する効果にも期待しています。
痰の症状が強いときにはもう1種類の去痰薬を併用することがあります。
痰の絡みが目立つときや鼻水が増えて鼻づまりの症状が強いときには処方することが多いです。痰や鼻水の原因が感染症でもアレルギーでも使います。
一般名は「アセトアミノフェン」です。「パラセタモール」と呼ばれることもあります。小児科領域ではもっとも一般的な解熱鎮痛薬(熱冷まし、痛み止め)です。
用量はアセトアミノフェンとして体重1kgあたり10〜15mgです。4〜6時間あけたら再度服用することができます。1日総量として体重1kgあたり60mgを限度とすることになっています。
なぜか控えな量で処方されていることが多い印象です。体重1kgあたり10mg弱で処方するお医者さんが多いです。
小児科では患者さんの体重によって処方量を設定することが多いです。カロナール細粒もその一つです。
抗菌薬でもよくあるのですが、非常に細かい単位までこだわった処方にときどき出会います。たとえば体重12.8kgのお子さんに対して、カロナール細粒20%を1回量0.64gとしていることがあります。自分だったら0.7gか0.8gにします。小数点以下第2位にこだわる必要はまったくない薬です。
おそらくは電子カルテでたとえば体重を12.8kgと入力しておくと、薬品名を選択した段階で処方量が計算されて結果が反映される機能を使っているのだと思います。便利な機能だと思いますがなんとなく違和感があります。
熱冷ましには坐薬もありますが、これは成分100mgで1個とかで半分や3分の2だけ使ってくださいということはありますが、カロナール細粒0.64gのような繊細な投与量設定はできません。ひとさまの処方にケチを付けるのはスマートではないですが、「調剤する薬剤師さんは大変だろうな」などと心配しています。
うちの電子カルテにもカロナール細粒については体重の入力で投与量を計算してくれる機能がついていますが、計算した結果のだいたい小数点以下第2位を繰り上げます。
今回の処方自体は好きな処方です、というか、自分が処方した内容です。患者さんのまわりでの感染症の流行状況、患者さんの来院までの様子、身体所見などによりアデノウイルス感染、溶連菌感染、急性中耳炎などの可能性が低いと判断してのこの処方内容です。